会計SaaS サインアップ後の体験改善
- 課題
- 「サインアップ後の体験が悪いのではないか」という相談。ただし課題が本当に存在するのか、どこにあるのかが不透明だった。
- 役割と体制
- UI/UXデザイン / チーム7名(PdM・eng・セールス・マーケ・サクセス)。社内ヒアリングによる現状整理からUI作成までを担当。
- 到達点
- 思考発話法のユーザーテスト5名を経てUI確定。プラン表はABテストまで実施。
「体験が悪い気がする」という曖昧な相談を、三種類のデータで「確信を持てないまま進めない体験」という課題に特定。「不明確から確信へ」を判断軸に三つの改善をプロトタイプの比較検証にかけて、UIを確定させた仕事です。
01ORIGIN
課題が「存在するか」わからない
マーケティングチームから「サインアップ後の体験が悪いのではないか」という相談がありました。よくある相談の形ですが、この時点では課題が本当に存在するのか、どこにあるのかが不透明でした。
案を出す前に、体験からビジネス課題までを一本につなげて可視化する。
この状態で案を作れば、印象で作った施策になるから。
02IDENTIFY
三つのデータを、一枚のジャーニーに重ねる
一つのデータだけで決めていません。三つはそれぞれ見えるものが違い、重ねて初めて全体がつながるからです。
| # | 使ったもの | 得たもの | 単独では |
|---|---|---|---|
| 1 | 社内ヒアリング | サインアップ直前〜直後のユーザージャーニー(地図) | 社内の思い込みが混ざる |
| 2 | 定量データ | ジャーニー上のどこに問題がありそうか(位置) | 落ちている理由がわからない |
| 3 | ユーザー行動データ(録画基盤) | 仮説が実際の挙動と合っているか(裏づけ) | 全体像が見えない |
三つを同じジャーニー上に重ねて、体験・数字・ビジネス課題を一枚で接続しました。「どこで・何人が・なぜ止まっているか」を、関係者全員が同じ画面で指させる状態になります。

03CRITERIA
「不明確から確信へ」を判断軸に置く
詰まりが見えたら、すぐ画面を直したくなります。その前に一つ挟んだのが、目指す状態の言語化です。関係者で現状の体験とビジネス課題を眺めながら、サインアップ後に止まってしまうユーザーがどんな状態にあり、どうなるとよいのかを議論しました。
不明確から、確信へ。
むずかしそう → できそうだという確信 / 次が不明 → 次が明確で気持ちよく進める
このコンセプトは、測るためではなく選ぶためのものです。案に迷ったときの判断軸として、そして「どういう状態を良しとするか」の認識を関係者間で揃える基準として機能しました。


04SELECT
詰まりのうち、影響が大きい三つに絞る
as-isジャーニーで見えた詰まりは一つではありません。その中から、目指す状態への影響が大きいものを三つに絞りました。
- 無駄な動線の削除
- 迷わせてしまうプラン表の改善
- ホーム画面に到達した後の「やること」の明示
三つに絞り、残りはやらない。
数を絞ることで、検証で一つずつの効果を確かめられる粒度にするため。
05VALIDATE
現状案と比較して、「わかりやすかった」で終わらせない
改善案のプロトタイプを作り、社内でプロダクトをあまり触ったことのない5名に試してもらいました。検証の設計で意識したのは三つです。
比較できる形にする
現状案と改善案の両方を試してもらう。改善案だけでは「わかりやすかった」という感想しか返ってこない。
迷いを本人の言葉で拾う
タスクを提示し、思考発話法で進める。
成否と意欲を分けて聞く
タスク完了の後に、利用の意欲度を別で聞く。完了できたかだけでは、続けたい気持ちになれたかはわからない。

06OUTCOME
UI確定と、捉えきれなかったこと
ユーザーテストの結果を反映してUIを修正し、最終案を確定。プラン表についてはABテストまで実施しました(結果の数値は手元に残っておらず、掲載していません)。



REFLECTION
被験者は社内の5名で、新規ユーザーの代理として設定しました。ただし社内である以上、前提知識はゼロではありません。本当の初見が何につまずくかまでは捉えきれていない——次にやるなら、社外ユーザーを1〜2名でも混ぜたいところです。
MAYOI RECORD
- 種類
- 始めたばかりの迷い。次の一歩が見えないのではなく、選択肢がありすぎて選べない。選べないまま、離脱する。
- 発見
- 人は「やりたいこと・やるべきこと」を明確に意識していない。できることが多すぎると、その組み合わせの中で何をすればよいかわからなくなる(やらないといけないことを抱えて使い始める、業務アプリだからこそ起きやすい)。
- 示唆
- 基本は、道を絞ること。選択肢を減らし、次にやることを示して「できそう」の確信を先に渡す。今回は動線の削減・プラン表の整理・やることの明示という形をとった。