行き場のない要望の迷い読了 約6分

プロダクトフィードバックサイクルの構築

2021.10 – 2023.09企画推進リーダー / 関係者 約20名
課題
プロダクトと機能が増え、フィードバックが集まっても次の工程につながらない。要望が判断されないまま滞留していた——組織の中の迷い。
役割と体制
企画推進リーダー / 関係者 約20名(PdM・事業企画・サクセス・セールス)。約2万事業所への調査から、収集・活用・届けるの3フェーズ設計と体制構築までを担当。
到達点
改善連絡後、95%が「ブランドへの信頼度が上がった」と回答。異動後も運用継続中。
ABSTRACT

「何度も企画が立っては続かなかった」領域を、続く仕組みに作り替えた仕事です。約2万事業所への調査で解約リスクを数字にして合意を作り、課題を症状から困りごとへ再定義。収集・活用・届けるの3フェーズを、「やらない」の明示まで含めて判断が止まらない流れとして設計し、定着の設計まで行いました。

01SURVEY

改善する理由を、数字にする

プロダクトフィードバックの仕組み自体は、以前からありました。ただプロダクトと機能が増え、関わる人が増えたことで、フィードバックが集まっても次の工程につながらなくなっていた。社内で何度も企画が立っては、続かなかった領域です。

体験を良くしたい意欲はありました。ただ改善の効果が数字で見えず、日々のオペレーションやKPIが優先されて着手できない。「なぜ今できないのか」をチームで議論して見えたのは、必要なのはアイデアではなく取り組む理由を数字で示すことでした。

判断

案を出す前に、まず調査で「取り組む理由」を数字にする。

効果が数字で見えないと、日々のKPIに優先されて着手されないから。

「悪い体験をした後、継続意向が下がるのではないか」という仮説を置き、体験毀損の有無・その後の行動・結果としての継続意向を比較できる形にするため、設問を4つに絞りました。

#設問
1体験毀損ポイントの確認
2問い合わせの有無
3プロダクト全体の満足度
4継続意向度

不満を聞くだけでは、声の大きい意見が集まって終わります。毀損の有無と継続意向を突き合わせられる形にしたのは、必要性を事業の言葉で説明するためです。約2万事業所に配信し、約360事業所から回答(信頼度95%)。体験毀損がこのまま続いた場合の解約リスクを、金額で推定できました。さらに継続意向が低い層の毀損要因を分類すると、プロダクト機能への不満の多くは、すでに要望として社内に上がっているものでした。

調査結果をもとにした社内共有と意思決定の資料
資料 01-1調査結果をサクセスチームの部長・本部長に共有し、改善活動の必要性で認識を揃えた

02REFRAME

症状ではなく、困りごとを課題に置く

最初に出てきた課題は、そのまま採用していません。現状の運用整理、定量データ、関係者へのヒアリングから課題を言語化したうえで、「どうしてそれが起きているのか/どうなるとよいのか」を関係者と議論し、整理し直しました。

初期の課題定義し直した課題目指す状態
要望と問い合わせが紐付けにくい要望からペインが読み取れない要望がなぜ必要かわかりやすい
体験毀損を継続して改善できていない要望を活かすために時間がかかる誰が見ても簡単に要望の状況がわかる
要望の吸い上げが属人的で数値化できていない要望が検討・改善されているか分からない要望の状況が起票者に伝わる
判断

初期の課題(運用の症状)ではなく、その症状が生む困りごとを課題に置く。

症状のまま進めると、ツールを入れて終わる施策になるから。

現状の運用や定量情報のヒアリングを通して整理した初期の課題
資料 01-2[初期の課題整理] 運用と定量情報から言語化した初期の課題
なぜ起きるか・どうなるとよいかを議論して整理し直した課題
資料 01-3[進化させた課題] 議論を経て、何を解決するかを整理し直した

03ALIGN

「みんなで作っている」状態を保つ

巻き込み方も設計の対象として扱いました。関係者が20名規模で、部署もPdM・事業企画・サクセス・セールスにまたがっていました。

判断

正しい設計より先に、合意を作る段取りを設計する。

正しい設計をしても、合意がなければ運用に乗らないから。

  1. まず企画全体としてどこに向かうのか、理想の状態を言語化して共有した
  2. ヒアリング → まとめ → 改善、を繰り返し、意見が反映される状態を作った
  3. ロードマップは1〜3年先まで引き、3ヶ月ごとにOKRを設定して振り返りのたびに更新した

「自分が作ったものを配る」のではなく「みんなで作っている」状態を保つ。理想状態の言語化も課題の再定義も、関係者を集めた場を設計・進行する形で行いました。

1〜3年先の目指す状態と進め方を整理したロードマップ
資料 01-4[ロードマップ] 1〜3年先の状態を整理し、3ヶ月ごとのOKRで随時更新した

04BUILD

収集・活用・届ける の3フェーズに分ける

サイクルを 収集 / 活用 / 届ける の3フェーズに分け、それぞれが次の工程につながるように構築しました。

PdMと協力し、過去の要望約1,500件を分類。要望起票フォームの記載項目とSalesforceとのデータ連携を設計し直しました。変えたのは、集める情報の中身です。 要望の言葉だけでなく、それがないと何に困るのかという背景を残すようにし、サポートの協力を得て小規模に試し、改善を5回ほど繰り返してから本格展開しました。

要望収集の課題のbefore/after
資料 01-5[収集] 集める情報の中身を、背景まで残せる形に変えた
改善後の要望内容。検討に必要な情報が入るようになった
資料 01-6[改善後の要望内容] 検討に必要な情報が入り、感謝の声が届くようになった

活用フェーズでは、各チームの開発プロセスをヒアリングし、共通の基本フローを描きました。

判断

チームごとの運用にはせず、共通の型を1本作る。

場所ごとにやり方が違うと、人が異動するたびに覚え直しが発生するから。共通の型があれば、人が動いても運用は残る。

要望収集 → サクセスチーム内で分類 → PdM共有 → 振り分け(ロードマップに乗せる/差し込み対応/中長期で検討/やらない)→ 開発 → ユーザー連絡。振り分け先に「やらない」を明示的に置き、判断されないまま滞留する要望をなくしました。やらないと決まったことも、決まったこととして起票者に返せるようにしています。

要望収集から分類・振り分け・開発・ユーザー連絡までの共通フロー
資料 01-7[共通フローの最終形] 「やらない」も含めて振り分け、判断が止まらないようにした

届けるフェーズでは、要望をくれた方へリリース後に個別連絡する工程を作り、手順化。「フィードバックを伝えてからその後」のジャーニーをas-isとto-beで作成し、関係者とアイディエーションを行いました。

ユーザーがフィードバックを伝えてからどんな気持ちで過ごすかのジャーニー
資料 01-8[ユーザージャーニー] 伝えた後の気持ちの流れを可視化した

05SUSTAIN

手順は浸透しない前提で、定着を設計する

手順書を配るだけで運用が変わることは、まずありません。手順は浸透しないものだという前提に立ち、伴走と、続いているかを確認できる状態づくりをセットにしました。

  1. 運用状況の可視化

    サイクルが回っているかを常時確認して改善できるよう、指標を設計しダッシュボード化した。

  2. 組織体制の構築

    活動の必要性と必要な人員を事業部長に提案し、運用継続と改善検討の責任者をアサインしてもらった。

サイクルが回っているかを確認するダッシュボード
資料 01-9[運用状況の可視化] 続いているかを数字で確認できるようにした
運用継続と改善検討の責任を持つ組織体制
資料 01-10[組織体制の構築] 運用が人に依存しないよう、責任を体制に落とした

06OUTCOME

続いている、という結果

要望改善の連絡を行った後のアンケートで、95%がこの活動によってブランドへの信頼度が上がったと回答しました。社内で何度も企画が上がっては継続までできなかった領域ですが、関わる人を巻き込み、現場の運用も踏まえて構築したため、現在も継続しています

REFLECTION

仕組みを回すところまではできましたが、この活動が事業にどう効いたのかは言えません。入口では解約リスクという事業指標で必要性を説明した一方、運用継続のために設計した指標は「サイクルが回っているか」を見るもので、「事業に何をもたらしたか」を見るものではありませんでした。入口と出口で指標の種類が入れ替わっています。効果は長期でしか現れないと考えて後任に引き継ぎましたが、短期で確かめられるKPIを置いていませんでした。今なら、短い周期で確認できる指標を並行して立てられないかを検討します。

MAYOI RECORD

種類
行き場のない要望の迷い。組織の中で、要望が判断されないまま滞留する。仕組みはあっても、次の工程につながらない。
発見
迷いを生むのは選択肢の多さではなく、判断が下りないこと。特に「やらない」が決まらないまま放置されることが、最大の滞留を生む。
示唆
判断が止まらない流れを作る。「やらない」も含めて必ず決め、決まったことを起票者に返す。仕組みは配って終わりにせず、続いているかを確認できる状態とセットで設計する。

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